− 日本の消費者は法律で守られていないのですよ! − 

 
日本の消費者は法律で守られていないということを言えば皆さんは「そんなバカな」と思われると思います。しかし、これは本当です。 日本では企業と国を守る法律はあっても消費者を守る法律はありません。皆さんは「欠陥住宅」という言葉を聞かれたことがあると思 います。住宅業者に依頼して家を建てて、住んでみて始めて住宅に欠陥が見つかったとしても家を建てた住宅業者を罰する住宅基本 法という法律はありません。業者から引き渡される前に1級建築士などにお願いして家の床下から屋根裏などを点検しないと後で欠陥が 見つかっても何も出来ず損をするということです。私も車で同じような事がありましたのでよく分かります。私の場合は車の販売店が 私に車を売る前に車をどこかに落として車体の下側を壊した物を修理して新車として私に販売しましたが、使用中に修理したところが 壊れ、はじめて車の異常に気が付きましたが時すでに遅しで販売店に何を言ってもだめでした。最後は調停で決着しましたが、その中 で法律は消費者の味方ではなく企業の味方だということが良く分かりました。私は事故を起こしてボディの底を修理した車を新車とし て私に売った販売店が悪いはずだと主張しましたが、調停員の方が「自分で車をよく調べて買わなかったあなたに落ち度がある。」 と言われたのには驚きました。だから私が「じゃ、あなた方(調停員)は車を買う時には買う車を乗ってみたり、車の中や下にもぐって 良く調べて買うのですか?」と聞きましたら「いえ、しません。」と答えられました。だから私が「そうでしょう。信頼関係で買います よね。販売店は正常な車を売るのが当たり前で事故車を新車と言って売るのはおかしいのではないでしょうか?」と聞きましたところ 「法律では確認をして買わない方が悪いのです。」と答えられました。そこで私は1962年に起こった「ライポンF誤飲事件」を思い出し ました。この事件は庵島弘敏さんがライポンFという粉末の合成洗剤を粉ミルクと勘違いし飲んでしまい亡くなったという事件です。 ライポンFには「厚生省実験証明・毒性を有せず衛生上無害である・ライポンFは食品関係の専用洗剤として厚生省や各種公共機関の厳密 な審査により、最も優秀であることが証明され、推せん第一番号を得ております」 (『だからせっけんを使う』船瀬俊介著・三一新書・P.106)と書いてありましたので庵島さんが粉ミルクと勘違いして飲んで異常に気 が付いた時にも安全と思い、病院に行かなかったので亡くなりました。「厚生省や各種公共機関の厳密な審査により、最も優秀であ ることが証明され」とありますが「当の責任者である厚生省・食品衛生課長が『正直言って(昭和)三十一年当時は、日本で1つしか研 究機関はなかった』と驚くべき証言をしています。」(『だからせっけんを使う』船瀬俊介著・三一新書・P.107) 「厚生省や各種公共機関の」とラベルに書いてあることがデタラメだった訳です。そして庵島さんの遺体は警察の司法解剖でABSの急性中 毒死と断定されましたが裁判では負けています。メーカーがウソ表示をしているのに消費者は裁判で負けています。販売店と消費者は通 常、信頼関係で成り立っています。しかし、「確認をして買わない者が悪い」のなら粉ミルクなどは買えなくなってしまいます。買う前 に販売店で自分の買う粉ミルクが安全かどうか自分で飲んで確認しなければなりませんが、実際はできません。確認せずに買って何か事 故でも起きたら消費者の責任になってしまいます。これが法律の世界と現実の世界の矛盾です。調停員すらしていない無理難題のことを 法律は一般消費者に求めます。その調停員に「法律はなぜ企業に味方するのですか」と聞きましたところ「申し訳ないのですがそうなっ ているので仕方ありません。」と答えられました。

「最近もう1つ気になること・・・司法は市民の側にはたっていない。先日参加した集会で、司法制度の矛盾に直面している人たちの話を聞 いてショックを受けたからです。どこにでもいる市民がある日突然不幸におそわれ、企業や病院、行政を相手に裁判を起こしても司法は 市民側には立っていない・・・当事者になって初めて実感する現実。(中略)法律は事前に防げず、行政は何もできないことがわかりまし た。」(『消費者リポート・目黒だより』植田靖子著・日本消費者リポート第1146号)国立保健医療科学院部長の長谷川敏彦さんによる と日本での医療過誤の死亡者は年に2、3万人です。この数字だと1日に約70人前後の人が医療過誤で亡くなっている計算です。 (『かしこい!?患者学』朝日新聞 2002年4月6日付朝刊)これほどの患者が医療過誤で亡くなっているにも拘わらず医療過誤の裁判で 患者側が勝訴する確率はたったの1割です。9割は敗訴します。なぜでしょうか?それは患者側が医療ミスなどを立証しなければならない からです。医療に無知な素人が医療ミスを立証できるはずはありません。自分ではできない場合は医師にお願いして立証してもらえる方 法はありますが、仲間の医師のミスを指摘するような医師はほとんどいません。このように素人が立証できないことがが分かっているに も拘わらず法律では被害者側が立証することになっています。

「PL法という法律ができ、ある製品によって被害を受けた場合は、その製品責任を問うことができるようになった。しかし、化粧品に 関しては、たとえ被害があったとしても原因を特定することは難しい。新しいシャンプーを使ったら頭皮に湿疹ができた、といっても 絶対にシャンプーが悪いとは言いきれない。同じ製品を使っている他の人がなんでもなければ、訴える根拠に乏しい。まして、何十年 もたって出てくる慢性毒の原因など、特定しようもないだろう。化粧品には、PL法も役に立たない。それなら、誰が責任をとるのか。 自分でとるしかない。化粧品を使うにあたっては、自分で責任をとるしかないのである。」 (『髪は石けんで洗いなさい』小澤王春著・(株)経済界・P.160)いくらPL法があってもそれを証明できる証拠がないことにはどうしよ うもないのです。食中毒のように症状が直ぐに出る場合は何が原因か特定しやすいのですが、石けんや化粧品は使ってすぐに異常が出 るようなことはありません。だからほとんど泣き寝入りということになります。 『冷凍庫が火を噴いた メーカー敗訴のPL訴訟』(全国消費者団体連絡PLオンブズ会議編・共栄書房)という本があります。 これはPL訴訟でメーカーの賠償責任が認められるまでの記録ですが、その賠償責任を認めてもらえるまで8年もかかっています。8年も裁判 で争わなくてはならずPL法があるからと安心はできません。万が一、裁判で勝ったとします。しかし、いくら賠償金をもらっても損なっ た健康は戻りません。それと同じように法律で消費者は守られるようになったとしても損なった健康は戻りません。製品が悪くそのこと が原因で病気になった場合、それを許可した役人や製造した人が病気や痛み苦しみを肩代わりしてくれるのならいいですが、その病気は 使ったり、食べたりした本人が背負うことになります。

現在、裁判をする時には弁護士費用はそれぞれの当事者が自分達で依頼した弁護士分を自分達で負担しています。しかし、その弁護士 費用を自分の依頼した弁護士費用はもちろんのこと相手側の弁護士費用までも敗訴者が負担するように「弁護士費用の敗訴者負担制度」 にかえられようとしています。普通の人が裁判を起こすというだけでもかなりのエネルギーを要しますが負けた方が両弁護士費用を負担 するとなると絶対に勝訴すると分かっている裁判でないと資金的に乏しい一般の人は裁判を起こせなくなります。「濫訴の歯止めとして 有効であり支持する」(『消費者リポート・弁護士費用の敗訴者負担制度』水原博子著・日本消費者リポート第1152号)と、この制度を 大企業の約800社が支持しています。商品を売る時には「消費者第一主義」と言いながら裏では消費者が裁判を起こせないように手をま わしています。これが大企業の真の姿です。ただ大きい会社だからだとかCMなどをテレビで見ているから、みんなが使っているから などで商品を選んでいませんか?消費者は法律で守られていないのですから、これら安全の根拠とはまったく関係のないことで商品を 選ばないようにすることが自分を守る1つの方法ではないでしょうか。

もう一度書きます。日本では国と企業を守る法律はあっても消費者を守る法律はありません。


2002年4月
 
 
 
エコロジカル・ヘルシーショップ三友 桧垣史郎
引用・参考文献
『だからせっけんを使う』船瀬俊介著・三一新書
『冷凍庫が火を噴いた メーカー敗訴のPL訴訟』全国消費者団体連絡PLオンブズ会議編・共栄書房
『髪は石けんで洗いなさい』小澤王春著・(株)経済界
『消費者リポート・目黒だより』植田靖子著・日本消費者リポート第1146号
『消費者リポート・弁護士費用の敗訴者負担制度』水原博子著・日本消費者リポート第1152号
『かしこい!?患者学』朝日新聞 2002年4月6日付朝刊


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