− 牛乳の熱処理問題 − 

 
日本の牛乳には、まだ重大な問題があります。それは熱処理の問題です。WHO(世界保健機構)とFAO( 国連 食糧農業機関)がIDF(国際乳業連盟)に牛乳の加熱処理の定義を定めるように要請しました。それを受け て1980年のIDF(国際乳業連盟)総会で協議され、2年後に国際的な定義が発表されました。パストゥリゼ ーション(パス乳)とステアリライゼーション(UHT乳)の2種類の熱処理がその時に決められた国際 的な定義です。
●パストゥリゼーション(パス乳)
生乳の化学的・物理的変化(栄養・性質)と、味や色など官能的変化が最小となるような熱処理を加え、 病原微生物の危険性を最小にする事を目的にした製造・熱処理です。
     低温長時間法(LTLT)  63〜65℃ 30分間
     高温短時間法(HTST)  72〜75℃ 15秒間
●ステアリライゼーション(UHT乳)
100℃以上の熱を加えて全ての微生物を死滅させ、また微生物の増殖を抑制する事を目的とした処理です。
     超高温熱処理(UHT) 120〜145℃、2〜3秒間

日本で流通している牛乳の約97%はステアリライゼーション(超高温殺菌処理・130℃ 2秒間)で処理された ものです。IDF(国際乳業連盟)の基準によれば、この牛乳は輸出用、旅行の携帯用、航空機の機内食用、 宇宙飛行士や遠洋航海の食用など保存用牛乳です。保存した上で特殊な用途に使う特別な牛乳で、毎日常飲す る牛乳ではないようです。ちなみにアメリカ、イギリス、オーストラリア、酪農国の北欧などでは、超高温殺 菌処理牛乳は一般市場には流通していませんので、一般消費者が飲むことはありません。アメリカ、イギリス 、オーストラリア、北欧など酪農先進国では一般には売られていない牛乳のカスを日本では栄養価が高く体 に良いと学校給食や病院食で出しています。学校給食や家庭などで超高温殺菌牛乳を毎日飲むことについて 、その安全性をIDF(国際乳業連盟)で保証しているわけではないそうです。「品質を重視する世界の体勢 はパス乳(低温殺菌牛乳)のみが牛乳です。日本でいま主流の超高温殺菌牛乳は、国際定義では低品質の 特殊牛乳なのです。」(『牛乳神話完全崩壊』外山利通著・メタモル出版・P.106)超高温殺菌処理をする ため、栄養価は失われています。生乳に含まれている細菌の内、80%は乳酸菌やヨーグルト菌などの善玉菌で すが、これらも高温のため失われ、ビタミンCも失われてしまいます。ステアリライゼーション(超高温殺菌処 理・130℃ 2秒間)で処理された牛乳は保存用ですから、アルミ箔で内張りした紙パック容器に入れられて常温 で数ヶ月保存できるものを指しますが、日本では普通の紙パックですので、長期保存も無理です。

牛乳に含まれているカルシウムの中でも消化吸収がよいとされている40%のイオン状カルシウムも、高温のた め消化吸収の悪いコロイド状のカルシウムに変質してしまい、消化吸収のいいホエータンパクの約80%も変 質し、アミノ酸の一部も減ります。牛乳に含まれている脂肪分が固形化する事を防ぐため、高圧をかけて脂肪球 を粉々に砕くホモジナイズ(脂肪球均質化処理 ※1)を行います。その脂肪球均質化処理のためビタミンD、 Eも失われてしまいます。
生乳には発ガン物質の過酸化水素(※2)が生成されていますが、それを分解する酵素も存在しています。そ のため、生乳や低温殺菌牛乳からは過酸化水素は検出されていません。そのことを裏付けるように1985年7月、 同志社大学西岡一教授によって85℃以上の高温殺菌処理した牛乳には過酸化水素が生成されていることが解 明されました。日本の牛乳は超高温殺菌をするため130℃に熱せられます。そのため、過酸化水素を分解する 酵素は活性を失い、過酸化水素はそのまま牛乳の中に残留しています。その牛乳をコップに入れて蛍光灯など 光のある所に置いておくと過酸化水素は5分後には10倍、10分後には35倍に増えるそうです。牛乳の約90% は水分で栄養素は残りの約10%ですが、その少ない栄養素が超高温殺菌処理のため、ほとんど失われ高脂肪と 危険性だけが残っている牛乳のカスです。ヨーロッパやアメリカ、オーストラリアに住む白人は乳糖を分解 する酵素(ラクターゼ)を持っている上に生乳に近いパス乳を飲んでいますから、カルシウムやその他の栄養 素を牛乳から得ることが出来ます。しかし、日本人のほとんどは乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)を持っ ていない上に栄養価のない牛乳のカスである超高温殺菌牛乳を飲まされているのですから、乳業メーカーや国 がいうほど日本人の健康向上にどれほど貢献しているのか怪しいものです。むしろ健康悪化に貢献している としか思えません。

低温殺菌牛乳であっても日本では気を付けなければいけません。日本では100℃以下の殺菌方法をすべて低 温殺菌牛乳と呼ぶらしく、IDF(国際乳業連盟)の基準にない「75℃ 15分」や「85℃ 15分」も低温殺菌牛乳と して売られています。牛乳を買う時には殺菌温度をよく確かめて買って下さい。低温殺菌とは63〜65℃ 30 分間か72〜75℃ 15秒間のいずれかを呼びます。

ある牛乳屋さんのホームページに「特に、日本の高温多湿の夏は、殺菌効果の高い超高温瞬間殺菌の処理を した牛乳が、より安心して飲んでいただけます。」と書いてありました。何か変だとは思いませんか?この 牛乳屋さんは夏のことしか言っていません。日本の冬はどうなんでしょうか。いくらなんでも高温多湿にな るとは思いませんが、冬でも超高温瞬間殺菌処理の牛乳を出荷しています。超高温殺菌は夏のためにするのな らせめて他の季節には低温殺菌にすればいいと思いますが、現状はされていません。オーストラリアはみなさんもご 存知のように暑い国です。その暑い国で生産している牛乳は低温殺菌牛乳ですから、できないことはないはず です。実際に日本でも夏の間も低温殺菌牛乳を販売しています。しようと思えば出来るのです。この牛乳屋 さんの超高温処理をすることの理由は消費者をごまかすこじつけとしか思われません。
そもそも国際基準では低品質で栄養価のないとされている牛乳が、日本で流通していること自体おかしなこと です。前出の牛乳屋さんの訳のわからない理由のように消費者をごまかしてまで超高温殺菌牛乳を流通させ る理由があります。それは乳業メーカーが儲けるためです。30分間殺菌するのと3秒間殺菌するのとでは効率 と経費はまったく違ってきます。

石けんを愛好されている方ならわかると思いますが、この牛乳の殺菌方法の違いは石けんを製造する時の製 造法の違いによく似ています。 石けんの製造方法には、シャボン玉石けんさんなど良質の石けんを製造されているメーカーが採用さ れている製造法、「鹸化法」(油脂を炊いて、苛性ソーダで反応させる方法)と「中和法」(脂肪酸を苛性 ソーダで中和させる方法)(『自然流せっけん読本』森田光徳著・農文協・P.114)があります。
「鹸化 法」は、約1週間という時間と職人を必要としますので経費はかかりますが、良い石けんが出来ます。 「中和法」は、職人でなくても出来、石けんが出来上がるのに時間はわずか4〜5時間しかかかりません。 「鹸化法」は時間と経費がかかります。それに比べ「中和法」は時間も経費もかかりません。経費がかから なければ儲けは多くなります。そのため大手メーカーの多くは「中和法」を採用します。 石けんと同じように牛乳にも同じ事が言えます。低温殺菌牛乳は原乳の質が良くなけれ ばできません。そのため牛の飼育にも経費がかかり、殺菌時間にも時間がかかるため牛乳は高くなります。 超高温殺菌牛乳は原乳の質はあまり良くなくても出来ますし、殺菌も短時間で経費もかからないため儲けは 多くなります。メーカーが効率を追求すれば追求するほど消費者には不利益が生まれてきます。メーカーは、 効率よく商品をつくれば商品が安くなり、消費者にとって利益が生まれると言い、高効率化を正当化します。し かし、味噌や醤油なども短時間で出来、安く売れるようになりましたが、質は落ちるため合成化学物質から つくった添加物を添加して味や色を整えなければ売れません。添加物は100%消費者には不利益ですが、メーカ ーにとっては時間の短縮などで経費の節減になり、日持ちも良くなりロスが減りますので、100%メーカーのため で消費者のためにはなりません。これも効率化を追求したためです。要するに日本の乳業メーカーは、食品と しての栄養価などの品質や安全性よりも自分たちの儲けの方を優先していて、それを厚生省が許すという構 造が日本にはあるということです。ここに業と官の癒着があるためではないかと思わせてしまいます。ジャ ーナリストの竹村健一さんが言われています、「日本の常識は世界の非常識」は正にこの牛乳の熱処理問題の ためにある言葉のようです。最近でも薬害エイズ、ヤコブ病、狂牛病、など海外とは別な事をしていたこと で大きな事件となりました。イギリスや北欧など寒冷地で小麦などの栽培が難しいため、牛乳や肉などを食べ なければ生きて行けなかった国は、いかにそれらから栄養を摂り細菌などの危険性から逃れるかを先人達が犠 牲になり、食べ方や保存方法、殺菌方法を作り上げてきました。それら酪農先進国の教訓をまったく無視して 日本は栄養価のない危険な牛乳を栄養価が高くて安全性が高いとして販売しています。

話は逸れますが、私は柳井市の学校給食に出され、生徒は強制的に飲まされる超高温殺菌牛乳を低温殺菌牛 乳に替えていただこうと思い、柳井市長に要望いたしました。「国際的に低品質の超高温殺菌牛乳を毎日飲む ことに関してIDF(国際乳業連盟)が安全性を保証していないものを栄養価が高く、健康にいいとウソをつい て公の学校で出していることは問題です。これについて柳井市ではだれがどのような責任をとられるのでし ょうか。」というような内容の文章を出しました。しかし、返ってきました返事は「柳井市教育委員会では、 文部科学省などの方針に基づき」とか「学校給食用牛乳供給対策要綱及び山口県学校給食用牛乳供給事業実 施要綱に基づき」、「日本では厚生省令に基づき」、「国などの指導、推奨により」などすべて行政指導の もとに行っているので市にはまったく責任はないかのごとく書いてありました。。柳井市は責任をすべて他 所へ転化していて責任逃れをしています。責任の丸投げです。今の役人や政治家は責任をとりたくないため に「前例がない」や「○○の指導で行っています。」という発言をよくします。2002年6月9日、日曜日の 『報道2001』で自由党の小沢党首が「何か事が起こると全部責任逃れをして、人のせいにして、こういう風 潮がトップの政治家、そして、お役所自体がそういう体質を持っている。」、「責任回避、事なかれ主義、 国民の生活や基本的権利を守るよりも先ず、自分たちの身の保全」というように発言されていました。柳井 市からの回答は正に小沢党首の言われているとおりですね。

『官僚体質 ぞっとした』(朝日新聞朝刊・日付不明)に民主党の菅直人さんが厚生大臣の時、薬害エイズ について同省のある官僚に非加熱製剤の危険性がはっきりした時点でなぜ出荷を止めなかったかということ を質問をした所、「前の局長や課長が責任を問われることになるから、そっと(薬の在庫が)無くなるのを 待った」とか「失敗を隠すには国民が犠牲になるのも仕方がない」と言っているのを聞 いて菅さんは、「ぞっとした」そうですが、私もこの新聞記事を読み「ぞっと」しました。 このように自分たちの失敗を隠すため なら国民の命が犠牲になるのも仕方がないと言う役人が「学校給食用牛乳供給対策要綱・学校給食用牛乳供 給事業実施要綱」などをつくっているのです。牛乳の悪影響が出るのには長期間を要します。そのため、責任 の所在がハッキリしませんから責任は追求されません。だから行政はいい加減な対応なのです。しかし、急 性毒性であるO-157などの食中毒は食べたら直ぐに症状が出ますので、責任の所在がハッキリします。だから、行 政は殺菌など食中毒の発生を防ぐための指導は異常と思えるくらい徹底して行います。このように企業や役 人自身を守ることしか考えていないのです。以前、「厚生省のお墨付き」というコマーシャルがありました が、「失敗を隠すには国民が犠牲になるのも仕方がない」と言える人達が審査をしている ような所がお墨付きをしても私は信じられません。自分たちの保身の事だけを考えている行政と、売り上げ だけを追求するだけで消費者のことは何も考えていない大手企業を私はあまり信じられないのです。

話を牛乳に戻します。ミルクの館・健康最前線というホームページに下記のように書いてありました。
「●牛乳にはいろいろな雑菌がふくまれており、安全面を考えて、いろいろな方法で殺菌されています。以 前は、生産地と消費地が接近していたため、一番生乳に近い低温長時間殺菌法が主流でしたが、現在のよう に遠隔地で大量生産するには超高温短時間殺菌法に頼らざるを得ないのです。」
以前は、生産地と消費地が接近していたとありますが、山口県柳井市で販売されている低温殺菌牛乳の1つ は生産地が兵庫県神戸市です。山口県柳井市から兵庫県神戸市は約400キロ離れています。乳業メーカーの いう生産地と消費地が接近していたとは400キロくらいの距離をいうのでしょうか。戦争で接近戦という言い 方をしますが、この接近戦とは400キロくらい離れて戦うことを言うのでしょうか。接近戦とはほとんどの場 合、肉眼や双眼鏡で敵を確認できるくらいの距離で戦うことだと思います。そのため武器はちょっとした大 砲や小銃などです。400キロも離れていればレーダーで敵の位置を探り、ミサイルのようなもので攻撃しなけれ ばならず、接近戦とは言わないのではないでしょうか。「以前は、」とは一体いつの時代のことを言われて いるのか分かりませんが、たぶん、この場合の以前とは比べものにならないくらい冷蔵輸送技術は進歩して いるはずだし、道路も整備されていて「以前」のように運送に時間はかからないはずです。だから神戸の低 温殺菌牛乳を400キロも離れた柳井市で販売しているのです。しようと思えばいくらでもできるのです。しか し、日本の大手乳業メーカーは低温殺菌牛乳をつくりません。それは何故か、これは、あくまでも私の考え ですけれど、低温殺菌をすれば製造に時間がかかるため大量につくることができません。そのため、コストが かかり儲けが出ないために超高温殺菌をしているのではないでしょうか。それとも、ある乳業メーカーがし ていたような牛乳を再利用するためには、完全に菌を死滅させておかないとまずいためではないかと勘ぐってし まいます。

「以前は、生産地と消費地が接近していたため、」と書かれていますが、これも国の政策で小規模な乳加工 業者の新規参入を抑制して、大手業者に集約して行くように仕向けたために生産地と消費地が離れてしまっ ただけです。このようにわざわざ生産地と消費地を離させておいて「超高温殺菌でないと安全は保証しませ んよ」というのも変な話です。このようにする事によって得をするのは乳業メーカーであって消費者は不利 益ばかりを受けます。

「●また、低温と超高温では、牛乳の味わいが異なるだけで、栄養面ではほとんどおなじです。」味は少 し違うが栄養面はほとんど変わらない とはおかしなことです。野菜などでもそうですが、熱を加えるとビタミンなどが壊れるというのは常 識です。それと同じで牛乳でも野菜と同じことが起こります。パストゥリゼーション(低温殺菌牛乳)とは 「生乳の化学的・物理的変化(栄養・性質)と、味や色など官能的変化が最小となるような熱処理を加え、 病原微生物の危険性を最小にする事を目的にした製造・熱処理です。」と栄養や性質の変化が最小になるよ うな熱処理とIDF(国際乳業連盟)が世界的な定義をして酪農先進国の乳業メーカーのしている熱処理方法 を日本の乳業メーカーは否定していることになります。

『安全が食べたい・AERA臨時増刊』(朝日新聞社・P.20)で東毛酪農業協同組合の大久保克美さんがこのよう に言われています。「みなさん、驚かれるんですが、さらさらと水のようで乳臭さが全くない方が、自然に 近い低温殺菌ノンホモ牛乳なんです。逆に、見た目には真っ白で美しいが、飲むとねばっこくてミルク臭が ある方が、高温殺菌のホモ牛乳です。慣れ親しんだあの牛乳の風味は、高温殺菌で出来る硫化水素が原因な のです。小さいときから高温殺菌牛乳しか飲んでいない日本人は皆、それが牛乳の特徴だと思いこんでいる。 給食の牛乳が飲めないと泣く子どもさんの方が、正常な味覚ともいえるのです。」大久保さんの言われるよ うに超高温殺菌牛乳はまずいのです。どうしても牛乳を飲みたいと言われる方は、危険でまずい超高温殺菌牛 乳を飲まないで安全で美味しい低温殺菌牛乳を飲むようにして下さい。

余談ですが、宮内庁と天皇家は、低温殺菌乳(パス乳)を飲まれているようです。確か宮内庁の洗浄剤は石 けんを使用されていると聞きました。宮内庁では危険なものは使用されないようです。


2002年7月
 
 
 
エコロジカル・ヘルシーショップ三友 桧垣史郎
引用・参考文献
『暮らしの安全白書』小若順一・松原雄一編著・学陽書房
『牛乳神話完全崩壊』外山利通著・メタモル出版
『ミルクの館・健康最前線ホームページ』www.asm.ne.jp
『安全が食べたい・AERA臨時増刊』朝日新聞社
『RE 学校でだしている牛乳について』柳井市長 河内山 哲朗
『官僚体質 ぞっとした』朝日新聞朝刊・日付不明
『報道2001』フジテレビ・2002年6月9日
『自然流せっけん読本』森田光徳著・農文協



※1 生乳に高圧をかけ乳脂肪をあらかじめ粉々にしておき、静置しておいても生クリームが浮いてこないようにする処理方法。

※2 過酸化水素とは、外傷の消毒などに使うオキシドールのことです。

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