−  狂牛病(BSE・牛海綿状脳症)に見る行政の無責任さ − 

 
前回のコラムに書きました某 市保健所の獣医師とのメールのやり取りで行政の無責任さを改めて実感する メールが届きました。何が無責任かといいますと、「『 BSEは全頭検査でほぼ100%防げるのです。ヒトへの 被害も全頭検査以降は0%に限りなく近くなっています。』と、この『ほぼ』の部分をどう解釈するのかは個 人の自由ですので食べるか食べないかは個人にお任せします。何度も申し上げている『消費者の選択の自由』 です。」(某 保健所獣医からのメールを引用)という発言をされています。
「ほぼ」とは100%完全という訳ではないということです。だったら「100%」という数字を紛らわしいので使っ てほしくないですね。勘違いをしてしまいます。この獣医さんはこの「ほぼ」に関して言い訳を長々と書いて おられます。

「『完全とは言えない』これには前のメールの通り同意いたします。
しかし、逆に完全に安全が担保されているものなどあるでしょうか?
・家の中にいて、直下型地震が起こったり、隣家のガス爆発に巻き込まれたり
・トラックやジェット機が突っ込んで来ないという保障はありません。
・外を歩いていて、車の事故に巻き込まれる危険性はつきものです。
・車を運転していて、安全運転していてもエンジントラブルが発生しないとは限りません。
・菜食主義を通しても、病気にかからない保障はありません。
・でも、家の中でテレビを見ていてもいいし、気分転換に散歩に行ってもいい。
・紅葉を見にドライブしてもいいし、ドライブインで何を注文してもいいのです。
あくまで100%の安全を求める人を「ゼロリスク症候群」と称します。
しかし、100%でなければ、全てダメというのでは、社会は動かないと思います。」 (某 保健所獣医からのメールを引用)

以上の危険性のほとんどは偶発的に起こる危険性です。それらと狂牛病(BSE・牛海綿状脳症)の危険性は違い ます。国が「BSEに感染していないことが証明された安全な牛以外、と畜場から食用として出回ることはあり ません。」と完全に安全性を保証しているのですから「ほぼ100%」では困るのです。「家の中にいて、直下型 地震が起こったり」とか「トラックやジェット機が突っ込んで」などは国が安全性を保証している訳ではあり ません。偶発的に起こる危険性と人為的な狂牛病(BSE・牛海綿状脳症)の危険性は根本的に違うのに、あた かも同じ危険性のように言っています。責任逃れです。言い訳をするようでは狂牛病(BSE・牛海綿状脳症) の安全性は完全ではないということです。
「あくまで100%の安全を求める人を『ゼロリスク症候群』と称します。」と獣医師さんは言われています。 リスクはゼロにはできない事なのにゼロリスク症候群はゼロを求めていると、ゼロリスクを求める人達をバカ にしているということは裏を返せば、「狂牛病(BSE・牛海綿状脳症)リスクはゼロにはできない」と言って いるのと同じことです。それならそれとはっきり情報を流してもらわないと困ります。狂牛病(BSE・牛海綿 状脳症)はただ困るのではなく、感染すれば必ず死が待っています。それほど狂牛病(BSE・牛海綿状脳症) に関してはリスク情報開示は重要なことです。

保健所の獣医師さんと同じ獣医師の八竹昭夫氏が日本消費者連盟の消費者リポート(2001年10月17日)に 『はみ出し情報』としてこのように書かれています。「牛肉・牛乳は安全か?狂牛病の病原体である異常プリ オンは、牛の体細胞中には循環器系の全組織に存在すると考えられます。ただし少量であるため検出は不可能 です。検出されないイコール安全であるということは、安全性の科学的根拠にはなりません。(中略)牛乳は比 較的汚染の機会は少ないでしょうが、牛乳の中には、細胞が含まれています。これが非常に多いと乳房炎の乳 で飲用にはなりませんが、法定数以下は、飲用として通用します。当然、その細胞中にはプリオンが存在しま す。これも数値は極めて少ないでしょうが、存在の可能性は否定できないと思います。」これを読まれると分 かると思いますが、牛肉を検査して出荷していても検出されない異常プリオンがあるかもしれない訳ですから 完全に安全とは言えません。同じページの『コラム1 獣医師からみた狂牛病』には「消費者が畜産の内情を知 らないことをいいことに」と書かれています。これと同じように行政は今の狂牛病(BSE・牛海綿状脳症)検 査について消費者が知らないことをいいことに消費者をごまかしています。それにしても同じ狂牛病(BSE・ 牛海綿状脳症)のことについて同じ獣医師でも消費者側に立つ人と業界側に立つ人でこれほど見解が違うので すから情報は両方から得なければ判断できないことがよく分かると思います。

責任の所在について質問したことに対して「単純に考えて確実に全頭検査後の牛肉による感染といいきれる少 なくとも2010年以降のvCJD患者さんが出た場合について話します。私は、保健所の人間であり、BSEリスクを 公に論じる立場にはありません。ただし、獣医師として『日本の牛肉はどうなの?』と聞かれた場合には同じ 解答をいたします。」(某 保健所獣医からのメールを引用)ここでも自分は保健所の職員なのでリスクを公に 論じる立場にないと言い、だけど肉は食べろと言っています。要は「安全か危険かは言うことはできないが、 牛肉は食べて欲しい。」と言っています。本当にいい加減と言わざる得ません。

「BSEに対してマイナスの意見を書いて、結果、その意見に左右された人々が牛肉を買わず、多くの食肉関連 業者が生活に苦しみ、実際自殺した人も何人もいた。責任はどう取るんですか?とも言いません。」 (某 保健所獣医からのメールを引用)
これはBSEをタバコに置き換えるとよく分かると思います。「タバコに対してマイナスの意見を書いて、結果、 その意見に左右された人々がタバコを買わず、多くのタバコ関連業者が生活に苦しみ、実際自殺した人も何人 もいた。責任はどう取るんですか?とも言いません。」と言い換えることができます。タバコを吸った人、全 員がガンになるとは限りません。だけどタバコには発ガン性などがありますので予防の原則で危険性を訴えて います。それと同じように牛肉を食べれば必ず変異型クロイツフェルト・ヤコブ病になるとは限りません。 しかし、狂牛病(BSE・牛海綿状脳症)に感染すれば死が待っていることと、狂牛病(BSE・牛海綿状脳症)に は潜伏期間というものがあります。その潜伏期間は10年から20年ありますので最低でも10年間、牛肉は念のた めに避けるべきだと思います。食肉関連業者のために食肉はあるのではなく食肉は消費者のためにあるのでは ないでしょうか。食肉業者のために狂牛病(BSE・牛海綿状脳症)を恐れながら食肉を食べる必要はまったく ないと思います。食肉業者が苦しむのは消費者が食肉を食べないからではなく、国の狂牛病(BSE・牛海綿状 脳症)対策が不備だったためです。そこで狂牛病(BSE・牛海綿状脳症)関連行政は責任のすり替えをしない でほしいと思います。消費者が危険を避けるのは動物として当然の事です。

「消費者の選択の自由」とは、ある商品について良いことも悪いこともすべてを生産者や販売者は情報開示し て、消費者はそのすべてを承知して「これだけのリスクなら私は買う」とか「これだけのリスクがあるのなら 私は買わない」というように消費者に生産者・販売者は包み隠さず正確な情報を提供して消費者が判断できる 環境が「消費者の選択の自由」です。「消費者行動は法や道徳に抵触しない限り個人の自由で保障されていま す。私は消費者をバカにしているのではなく『情報を知り、分析し、正しいと思った行動を取って下さい』と 言っているのです。」(某 市保健所獣医師からのメール)このように獣医師さんは言われていますが、日本 で販売されている商品や食品全般にもいえることですが、狂牛病(BSE・牛海綿状脳症)に関しても「情報を 知り」が一部の積極的に情報を収集しようと思っている人を除き一般の消費者には情報がほとんどないに等し い状況です。農水省や厚生労働省などのホームページには「今後はと畜場においてBSEに感染していないこと が証明された安全な牛以外、と畜場から食用として出回ることはありません。どうぞ、安心して召し上がって ください。」(農林水産省ホームページ・厚生労働省ホームページより)が代表例のように食用の肉はまった く不安のない安全な肉以外は市場には出回らないように記述してあります。テレビや新聞、柳井市では市の広 報誌などにも「牛肉は安全」のオンパレードです。これだと消費者は100%牛肉は安全だと思いこみます。この ように生産者・販売者にとって都合のいい偏った情報だけを流し、生産者・販売者にとって都合の悪い情報を 隠していたのでは消費者の正確な購買リスク評価能力を狂わせます。

しかし、農林水産省などが言うこととはまったく逆のことが現場では起こっています。狂牛病(BSE・牛海綿 状脳症)が発生して、全頭検査が始まるまで市場に出回っている肉を国が買い取る処置が取られました。そのこ とについて私がある牛肉の産地で聞いた確かな情報によりますと、牛肉卸売業者などは市場に出回っている肉 を回収して、その肉を国に買い取ってもらうのが本当ですが、業者が取った行動は国が決めた買い取り価格より も高く小売店に卸した肉は差損が生じるので回収せず、買い取り価格よりも安く小売店に卸した肉は差益が生 じるので回収して卸した金額よりも高く国に買い取ってもらったそうです。国が決めた買い取り価格よりも安 く売っていた肉ですから当然儲かります。そのため販売業者は臨時ボーナスを出したそうです。インターネッ トで買い取り価格を調べていましたら私が聞いたことを裏付ける記事を見つけました。
熊本日日新聞2002年3月17日朝刊の記事で熊本市の食肉販売業者はロースやヒレ肉はキロ当たり5千円から1万 円もする肉とハムやソーセージにするキロ当たり1,114円の原料用の肉と同じ価格で買い取ることに納得がい かず、ロースやヒレ肉は市場に流したと証言したそうです。
この買い取り制度は未検査牛肉を市場から隔離することを目的とし、安全宣言のよりどころとなった制度で す。ところが実体は以上のようなずさんな国の対応です。行政のいい加減さ、無責任さがこの制度でも表れ ています。

話はそれますが「安心して牛肉を食べたい100人の会」というのを新聞の全面広告で見られた人もいると思い ます。この全面広告には4500万円かかっていると言われています。狂牛病(BSE・牛海綿状脳症)の疑問点を 解明するために著名人個人が自分の4500万円ものポケットマネーを出してまで新聞広告を出すものでしょうか。 この疑問を解くように、狂牛病(BSE・牛海綿状脳症)対策として国から予算が出たものの狂牛病(BSE・牛海 綿状脳症)パニックが予想以上に早く収束したため予算が余ってしまい、その予算を消化するため「100人 の会」なるものを著名人に作らせ予算を流したらしいと噂されています。それでなくても狂牛病(BSE・牛海 綿状脳症)のために大事な税金をムダに使っている上にまた、4500万円という税金を無駄に使う。近年の不景 気で税収がひっ迫している時に本当に税金を何と思っているのでしょうか。行政は狂牛病(BSE・牛海綿状脳 症)で国民を恐怖のどん底に陥れておいて、そのどん底に陥れた国民の大切な税金を無駄なことに湯水の如く 使う。こんな国賊行政者はいらないと思うのは私だけでしょうか。

2002年10月17日付の朝日新聞朝刊に『飲食業者研修に保健所職員同行』という記事がありました。内容は 「下関市の保健所職員が、指導対象となる飲食業者らでつくる市食品衛生協会の研修旅行に同行していた。」 というものです。これは下関の保健所だけで行われていたことではないように思います。食肉関連業者と保健 所もこういう関係があるのではないかと勘ぐってしまいます。だから保健所職員と業界の癒着が生まれ業界側 に立つのもうなずけます。
選択の自由と獣医師は言われますが、中立の立場にある行政が業界側に立ち、偏った情報しか流さない。これ が消費者の安全と健康を守らなければならない行政に身を置く人の発言かと思うと愕然とします。これほど消 費者をバカにしていることはありません。国がいくら安全性を保証しても獣医師がリスクゼロは不可能と言っ ているのですから完全に安全が確保されるまで牛肉は食べない方がいいように思います。食べて苦しむのは国 ではなく食べた本人です。国や業界の言うことを鵜呑みにしないことが自分を守ることになります。牛肉を食 べる食べないは消費者の責任になっていますし、狂牛病(BSE・牛海綿状脳症)に感染すれば必ず死が待って いることを肝に銘じておいて下さい。

『早く肉をやめないか?』(船瀬俊介 著・三語館・帯)に狂牛病(BSE・牛海綿状脳症)に感染した場合の症 状が書いてありますので紹介します。
1.物忘れなどよくありがちな異常から始まり、やがて頭痛に悩まされる
2.歩行困難になり、足がよろめきはじめる・・・そして幻覚
3.体の筋肉は麻痺し、発作や時折のけいれんに襲われる
4.痴呆症状が進み、思考力が鈍ると、自分がだれかもわからなくなる
5.立ち上がることも話すことも見ることも、食べ物を口にすることもできない
6.衰弱から肺炎を引き起こすか、飢餓に陥り、やせ細ってゆっくりと死んでいく



2002年10月
 
 
 
エコロジカル・ヘルシーショップ三友 桧垣史郎
引用・参考文献
『○○です。メールありがとうございました』某 獣医師からのメール・2002年10月11日
『メール拝見しました』某 獣医師からのメール・2002年10月15日
『牛海綿状脳症(BSE)の疑いのない安全な食品の供給について』厚生労働省ホームページ
『農林水産大臣談話』農林水産省ホームページ
『早く肉をやめないか?』船瀬俊介 著・三語館
『はみ出し情報』八竹昭夫 著・日本消費者連盟消費者リポート・2001年10月17日
『飲食業者研修に保健所職員同行』朝日新聞朝刊・2002年10月17日付
『牛海綿状脳症(BSE)に関する情報・Q&A』農林水産省ホームページ
『特集・BSE(狂牛病問題)』くまにち.コムホームページ



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