− 肉を食べると元気になるはホント? − 

 
ある焼き肉チェーンの新聞広告に「牛肉を食べると元気になる。」と書いてありました。しかし、この 新聞広告は間違いで肉を食べると元気は出なくなります。2003年2月24日に放送された『世界まる見え!テ レビ特捜部』でチーターの子育ての様子をルポしていました。 その中で、チーターが猟場にしている草原が乾期に入り、エサとなる草食動物が草 のある地域へ移動をし、猟場からいなくなった為、チーター親子が獲物を捕れず食 べ物に苦慮する様子を伝えていました。
チーターが草食動物を追わずにエサのない現在の地域を離れない理由は、肉食が原 因と言っていました。肉など動物性食品を消化するには相当のエネルギーを必要と します。そのため移動(運動)に使うエネルギーがないので、草食動物のいる場所 に移動できず、エサのない猟場に留まっているということです。 その証拠にライオンなどの肉食獣は普段でも動くことはあまりなくほとんどの時間をゴロンと寝て過ごしま す。特にライオンは、チーターよりも休む時間が長く、1日に体を動かすのはわずか2時間程度だそうです。 それに比べ動物性のものを食べない草食動物は元気です。動きも機敏です。
エルウィン・フォン・ベルツ(注)がドイツから来日し、人力車の車夫の体力に驚いたことが記録に残って います。東京から日光までを馬の場合は、途中で馬を6回取り替えて14時間かかったのに対し、 車夫は同じ距離を1人で14時間半で走りました。そのことに驚いたベルツは車夫の食事を調べました。 その結果、栄養学とはかけ離れた食事を摂 っていたので栄養学に添い肉などを与えました。栄養学に添う食事は車夫を3日で疲れさせ走れなくさせま した。そして元の食事に戻すと元のように元気に走れるようになったそうです。肉を食べない日本食の方が 体力がつくという実例です。肉食動物でさえ肉を食べると元気がなくなるのですから、穀菜食の人間が食べ ればなおさらです。だから、新聞広告は「牛肉を食べると元気が出なくなる。」と訂正すべきです。
「スポーツ栄養学の権威であるサンタモニカのベルンド・フレッドランダー医博はこういっている。『エネ ルギー不足を訴えるスポーツ選手が多いのですが、その原因の十中八、九は蛋白質のとりすぎです。蛋白質 の消化には多量のエネルギーを要します。そのため、筋肉を作ったり、筋肉の高い活動量を長時間維持した り、怪我から身を守る集中力を保ったりするのに必要なエネルギーが、大部分消化のほうに回されているの です。(中略)私はプロフットボールチームの食事指導を行ったことがありますが、彼らの大好物は特大ス テーキと小山のようなアイスクリームでした。それを野菜中心の、量より質の食事に変えたのですが、選手 たちはスタミナがついたうえに動きも機敏になり、怪我も目に見えて減りました。』」(『豊かさの栄養学』 丸元淑生 著・新潮文庫・P.106〜107)

昔、日本が裕福ではなかった頃、動物性食品をあまり摂らない粗食で胃腸に負担をかけない食事だったので すが裕福になるに従い動物性食品を摂る機会が多くなり、食事以外にもおやつやコーヒー、牛乳、清涼飲料 水などを四六時中、口にするようになりました。このような状態では胃腸は休む暇はありません。動物は体 で使うエネルギーの大半を食べたものを消化するために使います。常に物を食べているとエネルギーは常に 消化活動に使われ免疫活動に使われるエネルギーがなくなり病気に罹りやすくなります。大食家や裕福な社 会ほど病人が多いことはこのことで裏付けられます。
食事を摂らないで病気を治す断食というものがあります。先ほども書きましたが人や動物は食物を消化する ことにエネルギーのほとんどを使っています。そのため物を食べると免疫活動に使うエネルギーが少なくな ります。そこで食物を食べなければ消化活動をしませんのでエネルギーのほとんどを免疫活動にまわすこと が出来ます。断食はこのようなメカニズムで病気を治しているのです。「野生の動物は病気にかかったり、 けがをしたりすると、ものを食べずにいるか、熱を出す、もしくはその両方の断食と発熱によって身体を治 しているのです。これが自然の治癒力です。」(『東洋の智恵は長寿の智恵』渡辺昇一・石原結實 著・PHP 研究所・P.37)というように野生動物も病気になれば何も食べずに断食をしてエネルギーを治療にまわしま す。しかし、人間は病気になれば医者でさえ「栄養のある物を摂りゆっくり休みなさい。」と言います。栄 養価の高い物ほど消化にエネルギーを必要とします。特に動物性食品の消化には必要以上のエネルギーを必 要とします。だから、「病気になれば食べるものを控えて寝なさい。」が正しいのです。
「消化という作業は、胃腸に想像以上に大きな負担をかけるものなのである。当たりまえの食事をしていて さえそうなのだから、肉食をすると、胃腸の負担は何倍も大きくなる。蛋白質は、そのまま蛋白質になるの ではなく、いったん炭水化物に還元されてから、改めて体蛋白につくり変えられる。本来ならば必要のない 『炭水化物への還元』という余計な作業を負わされるので、肉食に偏った食事の消化作用においては胃腸の 疲労度はそれだけ大きくなる。」(『クスリをいっさい使わないで病気を治す本』森下敬一 著・三笠書房 ・P.26)

私がアメリカを自転車で横断している時に牛肉のステーキを食べました。私以外のアメリカ人は「美味しい、 美味しい」と言って食べていましたが日本の牛肉を食べ慣れていた私には美味しくありませんでした。理由 は牛肉に脂肪がほとんどなくバサバサのステーキだったからです。普段から肉を多く食べるアメリカでは牛 肉が霜降りということはありません。牛肉など肉を多く食べるアメリカ人が日本と同じ霜降り牛肉のステ ーキを毎日食べていれば油のとり過ぎになりあっという間に病気になってしまうため、アメリカでは脂肪の少な い肉を食べています。アメリカで飼育されて日本に輸出される牛肉は、アメリカで消費される牛肉とは餌にす る飼料が違い脂肪が多く付く飼料で育てられています。要するに日本の牛肉とアメリカの牛肉は違うと言う ことです。油の大部分は中性脂肪からできています。その中で動物の脂肪は飽和脂肪酸の方が不飽和脂肪酸 よりも多く含まれています。飽和脂肪酸は室温で固まってしまう脂肪酸です。牛や豚の体温は人間よりも高 い39度くらいなので人が牛や豚の脂肪酸を摂ると血液の中で固まり血液の粘度が高まります。血液の粘度が 高くなると血液の流れが悪くなり細胞に酸素や栄養が供給されなくなります。人間は細胞の固まりです。そ の細胞に酸素や栄養が行かなくなるとエネルギーをつくり出せなくなります。そのため肉を食べると疲れて 元気は出なくなります。(『豊かさの栄養学』丸元淑生 著・新潮文庫・P.113)魚は牛や豚とは違い冷たい 水の中に住んでいますので魚の油は低温でも固まらないようにEPAという血液の粘度を下げてくれる働きをす る不飽和脂肪酸が含まれています。赤血球のEPA濃度が高まると柔軟性が出て、狭い毛細血管も赤血球が変形 してスイスイ通れるようになります。そうすると体の隅々の細胞に酸素や栄養が行き渡りエネルギーが体に 満ちあふれます。
動物性の脂肪を食べると血液中にコレステロールや中性脂肪が増え赤血球同士がくっつき合い狭い毛細血管 は通れなくなり酸素(血液がベトベトになると細胞全体への酸素の供給量が30%も減ることもある)や栄養が 細胞に行かなくなりエネルギー(元気)が出なくなります。ここに肉を食べない人力車・車夫の強靱な体力 の秘密があったのです。
「アメリカでは陸上動物の脂が体によくないことはすでに常識になっていて、わが国のように筋肉のあいだ に脂肪が混ざりこんだ霜降り肉を好んで食べるような人は存在しない。」(『豊かさの栄養学』丸元淑生 著・新潮文庫・P.115)

日本は季節、雨量など農作物を栽培するには適した国です。しかし、牛を放牧するにはあまり適した土地が ないので牛を飼育するには日本はあまり適していない国です。牛を飼う土地のない国は酪農の歴史もないし 酪農食品を食べてきた歴史もあまりありません。それだけに酪農食品に対して日本人は弱く、肥満や高脂血 症、糖尿病などの病気になりやすい体質をしています。なのに栄養があるということだけで「肉を食べろ、 牛乳を飲め」と国や栄養士、医者などが勧めています。その結果が近年の肥満です。肥満は糖尿病、高脂血 症、高血圧などのリスクが高まる病気の元です。唾液に澱粉を分解する酵素を持っているのは動物では人間 だけです。このことで分かるように人間は穀類を中心に摂ることが一番効率よく栄養が摂れ、消化もスムー ズに行え、体に負担をかけずにエネルギーを生み出すことができる動物です。体に負担をかけないからこそ 健康になれるのです。そんなことはまったく無視して今の栄養学では栄養とカロリー計算とバランスのみを 最重要視しています。栄養があって色々な食品を1日30品目摂るようなバラエティーに富む食生活をするよ う勧めています。しかし、これは本当でしょうか。肉を食べなければ筋肉が付かないと思っている方がほと んどだと思いますが、ゴリラやサルなどは果物だけであれだけの体をつくっています。馬や牛は草だけであれ だけ大きな体を維持しているし健康です。動物にとって偏食があたり前。動物で雑食をしているのはイタチ とタヌキとネズミくらいで大半の動物は超偏食です。それでこそ健康でいられるのです。日本は農耕民族で 昔から穀類や野菜類を中心に食べてきました。体もそれらを効率的 に消化するように日本人の腸は肉食をする欧米人に比べ長くなっているなど植物性食 品には強い反面、動物性食品には遺伝的に弱い体をしています。この ような体のため日本人は大豆製品など穀類を摂ることで血液の流れなどが良くなる体質をしています。特に アジア系女性は白人女性に比べ脂肪の溜まりやすい体質をしています。欧米人の体質と日本人の体質は違い ますが、栄養学や医療などは欧米人とアジア人は同じということを前提にすべてを行います。私の住む山口 県柳井市の近くに錦帯橋で有名な岩国市があります。その岩国市には米軍基地があり白人のアメリカ人は冬 でもTシャツ1枚という人を町でよく見かけます。しかし、日本人には冷え性が多い。これは牛や豚の体温は 高めで(アメリカ人)魚は冷たい水の中で体温が低いこと(日本人)に似ています。その体温の低い日本人 が常温で固まる動物性脂肪を摂れば血の流れが悪くなることは火を見るよりも明らかです。このように人種 や地域を無視してドイツから持ち込んだ栄養学を無理矢理日本に当てはめてしまったため医療費30兆円超の 病人大国日本になってしまいました。栄養があるなしではなく日本や日本人に合った食品か、日本人に必要 な食品かどうかという視点で食品は見ていただきたいと思います。
「肉食や乳食は、寒冷な自然環境であるため穀類やイモ類の収穫が期待できない地域で生まれた『代用食文 化』である。」(『伝統色の復権』島田彰夫著・東洋経済・P.126)

肉や乳製品をたくさん摂るようになって今まで日本になかった病気が増えました。その一つに肥満がありま す。現在、日本には糖尿病患者が690万人、糖尿病予備軍が680万人います。肥満は糖尿病などの原因になり ます。糖尿病になる食事とは高脂肪・低繊維食です。ファーストフードで提供されるメニュー、暖めるだけ ですぐに食べられる加工食品などに高脂肪・低繊維食品が多く、アメリカでもそれらをジャンクフード(ガ ラクタ食べ物)と呼ぶほど人の健康にとって価値のない食品です。ファーストフードや加工食品に多く使わ れているのが肉です。この肉に脂肪が多く含まれています。財団法人 山口県社会保険協会が配布した冊子 『これならできる健康日本21』(監修 長谷川敏彦)に「日本人の食生活で、最も大きく増えたのが動物性脂 肪の摂取です。脂肪のとり過ぎは、心臓病や脳卒中の原因になります。とり過ぎには十分注意しましょう。」 と書かれており、さらに「洋食には、高脂肪の乳製品が比較的多 く使われているので、さっぱりメニューの和食にかえましょう。」と乳製品は高脂肪食品と注意しています。 社会保険を払っている人たちが病気になれば、診療に対する保険料を払わなければならない立場の団体は肉や 乳製品のとり過ぎを注意します。その反対に食肉を普及させる団体である畜産振興事業団は以下のような行 動をとります。畜産振興事業団は沖縄の長寿と肉食習慣の関係を調べるため高名な栄養学者や骨董店経営者 で料理研究家の魚柄仁之助氏などで調査団をつくり調査をしました。沖縄の長寿老人は肉はあまり食べずむ しろ魚の方が好きという結果がでました。畜産物の販売を拡大しなければならない畜産振興事業団にとって 沖縄は豚肉の消費量が日本一なので当然肉を多く食べているだろうと考えていただけにまったく逆の結果が 出たことに困惑しました。しかし、畜産振興事業団が出したハンドブックには調査結果とは違い沖縄の長寿 老人はたくさんの肉を食べるから長生きができるかのように書かれていたそうです。そのハンドブックは全 国の保健所に無料で配布されたため、いかにも肉は日本人の健康や長寿には必要な食品かのように思わせる ウソの情報を信じ、栄養士などが肉や乳製品の普及に力をそそぎました。(『うおつか流 清貧の食卓』魚柄 仁之助著・農文協・P.59)病気が増えれば保険金を支払わなければならなくなり運営が難しくなる社会保 険庁などは動物性食品の弊害(本当のこと)を注意するが、畜産振興事業団など畜産物の販売を拡大するこ とを目的につくられた団体は真実とは異なる(ウソの)調査結果を無料で配布してまで畜産物を多く摂らせ ようしています。栄養士がカロリー計算をしなければならないのは牛乳を飲め、肉を食べろなどカロリーの 高い動物性食品を摂るからであり、日本の伝統食を食べていればカロリー計算などはしなくても済みます。 ウソの情報に騙されて体に良くない動物性食品を多く摂るから病人が増え医療費を国家予算の3分の1まで 使う病人大国になったのです。このまま行けば日本は医療費に潰されてしまいます。「もろもろの汚染の中 で、もっともおそろしい汚染は、消費者の頭の汚染である」(バックミンスター・フラー)と言われるよう にウソの情報を流してでも物を売ることが当たり前のことのように行われています。このようなことは早く 止めていただきたいと思います。
新聞広告のように「牛肉を食べると元気になる。」は間違いで「牛肉を食べると元気は出なくなる」がホン トです。元気な人でも肉食をすると元気が出なくなるのですから病気の人ならなおさらです。使えるエネル ギーのほとんどを消化に回せば病気も治りません。だから、病気の人は一度、肉や牛乳、卵を食べないとい う食生活を試してみてはいかがでしょうか。病気も快方に向かうかもしれません。
「このB・ベンナー病院はヨーロッパで最初の、ということは世界で最初の自然療法病院です。この病院で は、食事に肉や牛乳、卵を一切使わずに、黒パンや野菜、果物、ヨーグルトとといったRaw foodsを軸に治 療を行い、患者には毎朝ニンジンジュースとリンゴで作ったジュースを出していました。」(『東洋の智恵 は長寿の智恵』渡辺昇一・石原結實 著・PHP研究所・P.82)



エコロジカル・ヘルシーショップ三友 桧垣史郎
2003年6月
 
 
 
引用・参考文献
『豊かさの栄養学』丸元淑生 著・新潮文庫
『クスリをいっさい使わないで病気を治す本』森下敬一 著・三笠書房
『世界まる見え!テレビ特捜部』2003年2月24日放送
『東洋の智恵は長寿の智恵』渡辺昇一・石原結實 著・PHP研究所
『これならできる健康日本21』(監修 長谷川敏彦・財団法人 山口県社旗保険協会)
『うおつか流 清貧の食卓』魚柄仁之助著・農文協


(注)ベルツ=ドイツの医学者。明治9年に東京医学校(現在の東京大学医学部)に招かれ、同38年まで日本に 滞在、わが国の近代医学の発展に寄与した。日本にドイツの栄養学も紹介。

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