− 勉強不足の日本の医療 − 

 
以前、小社掲示板に下記のような書き込みがありました。

「できれば、6大卒の医系職の方、それから6大に準じる知識をもっている薬剤師さんにご相談ください。 なぜ、そのような方かというと、それらの方は医学・生物学に関する高度教育を受けていて、しっかりした 基礎ができており、さらに外国の論文も読むことができ、情報収集能力に長けているからです。この2つの 条件を満たさないと、突拍子もない情報に惑わされたり、自分で情報を収集して分析することができません。」
(眼科医ではない医師・小社掲示板より)

以上の書き込みを読まれれば医師は外国語に堪能で海外の論文も難なく読みこなせ常に最新の医学や薬学の情 報を十分に得て診療に役立てているように思えます。しかし、この書き込みの内容はほんとうでしょうか。高 度な教育を受けたかも知れませんがすべての医師が100%学んだ事を自分のものにしているかどうかは分かりま せん。外国語で書いてある論文を読みこなせる医師はわずかだと思います。以前、論文などを翻訳されている 方からメールをいただきまして日本でも最高学府の大学医学部の教授も論文の翻訳を頼んでいるということで した。だいたい日本人は昔から中学、高校で6年間英語を勉強していますが、ほとんどの方が英語はわからない と言われるほど外国語には弱かったはずです。それが医師だけは外国語には強いというはずはありません。それ でなくても医大で高度な医学の勉強をしている上に外国語の勉強をして全員が堪能になれるとは思いません。
『成人病の真実』(近藤誠著・文藝春秋・P.110)に 「多くの医者たちの英語力は低くて、英語の文章を読みこなせないことは事実です。それでも日本語の論文を 読めばいい方で、病院に出入りする製薬会社の社員が置いていく薬の宣伝文章を読むだけで薬を実際に処方す る医者が少なくない。」と、ほとんどの医師には英語力がないように書かれています。それにしても 恐いですね。外国語もできない上に日本語の論文も読んでいない。薬の利点しか書いていない製薬会社のパン フレットだけを読み薬を処方する医師が多いとは「眼科医ではない医師」さんの言われていることとはまった く違います。そして、以前、私は小社掲示板で下記のようにも言われました。

「川崎病は合成洗剤が犯人としたり、牛乳の病原性を力説したり、BSE検査合格牛の危険性を過度に評価したり する氏ですが、コラムの引用文献を見る限り、そういった学会や専門家との意見交換、最新の情報(論文:多 くは英語)に接している様子はなく、合成洗剤メーカーさんや、獣医師や医師や、化学者、そして貴方のよう な食の専門家に首を傾げられているのが現状のようですね。」
(小社エコロジカルな掲示板より)

専門家などと意見交換をしていないことや論文を読んでいないから私の主張していることは間違いのよ うに書かれています。でも『成人病の真実』(近藤誠著・文藝春秋・P.110)にはこのように書いてあります。 「日本の医者の多くは、欧米の医学雑誌をほとんど読まず、最新知識を吸収 しないまま診療に当たっています。」や『患者には言えない ある医師の告発』(本多憲児著 ・扶桑社・P.48)にも「外国の論文を精査したところ、動物実験でPVPが網膜 内に蓄積されるという論文が見つかった。並み居る大学者がこの論文を見逃すはずがないと思ったが、大学の 教授というものは私を含め、案外、それほど勉強していないものだと知った」というように 書かれています。大学の教授でさえすべての論文に目を通していないのですから、一般の医師であれば言わず と知れたものです。ましてや製薬会社の薬に関する副作用なども詳しく書いてある有料の原論文をお金を出し てまでも読んでおられるのでしょうか。

なぜ私がこのようなことを書くかというと、薬などの使い方が科学的根拠に基づいていないことが多いからで す。例えば、抗生物質の使い方が日本では世界の常識とはかけ離れた使い方をしています。欧米では効果的な 抗生物質投与のタイミングを数々のくじ引き試験でおこなっています。その結果、術直前か術中1回投与が術 後の感染がもっとも少なかった為、世界の標準は原則的に術直前か術中に1回投与することとなっています。 ところが、日本では術後に使い、それも毎日2〜3回投与し、それを3〜4日つづけます。世界で標準になったの はおよそ15年前の1980年後半です。外国語の論文も読めるほど外国語に堪能で情報収集能力が高いはずの医師 が約15年前の世界標準の情報をまだ得ていません。未だに術後の投与です。そのため日本の病院で多剤耐性菌 が増えています。病気を治すはずの医療が病気を増やしています。医学には無知の私でさえ何年前かにNHKで 抗生物質のことを放送していましたので知っていました。それを教える立場にある人たちが知らないなどとは 日本の医療は本当に大丈夫だろうかと疑問を持つのも当たり前だと思います。

何故このようになってしまったのでしょうか。理由は製薬会社から大学の教授などが研究費をもらっているこ とにあります。抗菌剤を術直前1回の使用では製薬会社の売上が上がりません。そのため海外のくじ引き試験の 結果などは無視して研究費をもらっている製薬会社のために論文を「術後に毎日2〜3回投与し、それを3〜4日 つづける」と書けば製薬会社の売上が上がり研究費も継続してもらえるという構図です。人の命よりも自分の 欲望を優先させています。
「製薬会社と癒着している教授の論文は往々にして人間に大きな危害をもた らすことがある。(中略)私も某大学教授の論文を信じ、患者に『死』をもたらした苦い経験がある。」 (『患者には言えない ある医師の告発』本多憲児著・扶桑社・P.42)

大学病院で助教授や講師などの外科の指導医クラスに抗菌剤の使用に関するアンケート調査をした結果があ ります。「質問項目の一つは、手術時間が三時間をこえない場合、どこまで 点滴を続けるかです。これは前述のように、術前の一回の点滴で十分なことがエビデンス(証拠ないしデータ ー)で示されていますが、『一回きり』と答えた医師は一人、『手術当日かぎり』が一人でした。本来不要で ある『手術翌日まで』点滴をすると答えた者が三人、『手術二〜四日目まで』が四一人、『手術五〜七日目ま で』が三一人と、圧倒的多数が長期点滴を続けています。」(『成人病の真実』近藤誠著・文藝春秋・P.108) と教える立場の人たちがこのありさまですからどうしようもありません。

また、前述のアンケート調査で手術での感染を予防するために使う抗菌剤のタイミングは術直前1回きりが効果 的であることを知っていたかと聞いたところ「良く知っている」と回答した人が17人でした。しかし、その17 人の内、実際に実行している医師はたった1人です。抗菌剤の投与が1回きりの患者さんに比べて2〜4日と長く 続けた患者さんの方が創外感染症の発生が多くなったというくじ引き試験があるそうです。(長野赤十字病院)
知っていても行わない理由に「医者がEBM(根拠にもとづく医療)の理念に忠 実であれば、医療機関の売上は確実に減ります。とすれば、正しい知識を得ていても、診療に際しては無視な いし軽視する医者が出現してふしぎではありません。」(『よくない治療、ダメな医者から逃れるヒント』近 藤 誠著・講談社+α文庫・P.356)と科学に基づく医療は儲からないからです。
このように日本の医療のかなりの部分は科学的根拠に基づいた医療ではなく金銭的根拠に基づいています。人 の命を預かる医師が欧米のように医師免許の更新ということがないということもあり最新の知識を得ず、勉強を しなくても医師がつづけられ、民間療法を非科学的と非難しながら自分たちは科学という中味の無い衣を着て 医療をしているのです。
「世間で一流とされる大学病院でも科学的根拠に乏しい治療が行われること が少なくない。」(『カルテの余白』元国立がんセンター中央病院内科医長 渡辺 亨・2003年8月2日朝日新聞 朝刊)

「肺癌治療薬【イレッサ】の副作用死が二百四十六人になった。厚労省がド クターレター(緊急安全情報)を出したのが二〇〇二年十月十五日。それ以前に百六十二人が死亡していたから、 情報が流れた後に八十四人が死んでいることになる。」(『私は薬に殺される』福田 実著・幻冬舎・P.165)

「外国の論文も読むことができ、情報収集能力に長けているからです。この 2つの条件を満たさないと、突拍子もない情報に惑わされたり、自分で情報を収集して分析することができま せん。」と「眼科医ではない医師」さんは言われていますが上記のように厚労省からイレッ サに関するドクターレターが出ているにもかかわらずイレッサを使う医師がいるのです。このような重要な情 報さえも見逃すような医師がたくさんいるというのに「眼科医ではない医師」さんは、医師は高度な教育を受 けて情報収集能力が長けていると言われていますが本当でしょうか。
自分たちの能力の高さの自慢話をする暇があったら勉強をして下さい。そしてコンピューターの検査データー よりも患者さんの問診を重視して下さい。
「元気で働くサラリーマン達へ、心から伝えたいことがある。健康診断で異 常があったとしても、長期で飲む予防薬は止めた方がいい。医者ときたら、副作用が出た途端に知らん顔だ。 学会と製薬会社、厚労省はガッチリ組んで、保身的な審査しかしない。専門家と称する大学病院の教授も、こ れまた学会や製薬会社の仲間だ。薬を守るための意見しか言わない。人の命を忘れた拝金主義者ばかりだ。」 (『私は薬に殺される』福田 実著・幻冬舎・P.123)

私はできるだけ病院には行かないようにしていますが、人間ですから将来病気になり病院に行くようなこと もあると思います。特に年齢も50を越えると若い時には気づかなかった弱いところが病気となって出てきます。 そのため病院に行く機会も増えてくると思います。しかし、前述したような医療では安心して病院には行けま せん。高血圧や高コレステロールの数値を低く設定し、毎年行われる定期検診などの検査で健康な人でも基準 数値が低いために病人にされてしまい、病院に行く羽目になります。そんなことで病院に行って診察料や薬代 は払いたくありません。どうも今の医療は検査をして病人をつくり出し長期に薬を与えて儲けることばかりを 優先しているように思えてなりません。数値を低くしたため自覚症状のない人間に対して「お前は病気だ」と 言う医療は偽物(詐欺行為)の医療です。人に不安を与えてまで金儲けをするようなことはもう止めていただ きたいと思います。
医師免許の更新制度を新たにつくるようにして、最新の医療情報や基本的な知識をどうしても勉強しなけれ ばいけない環境をつくり出して貰いたいと思います。その上で、ウソやごまかし、過検査のない安心して受診 できる本物の医療を目指していただきたいと願うばかりです。
「アンケートに回答してくるような真面目な医者たちでも、その約八割に知 識がないか足りないことに、あらためて愕然とします。」(『成人病の真実』近藤誠著・文藝春秋・P.109)



エコロジカル・ヘルシーショップ三友 桧垣史郎
2004年8月
 
 
 
引用・参考文献
「眼科医ではない医師」小社掲示板より
『成人病の真実』近藤誠著・文藝春秋
『私は薬に殺される』福田 実著・幻冬舎
『患者には言えない ある医師の告発』本多憲児著・扶桑社
『よくない治療、ダメな医者から逃れるヒント』近藤 誠著・講談社+α文庫
『カルテの余白』 渡辺 亨・2003年8月2日朝日新聞朝刊



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