− 定期検診の効果 − 



毎年検診をしてどれほどの効果が上がっているのかを私は知りませんが、たぶん、効果は上 がっていないと思います。それでなければ毎年、医療費が1兆円ずつ増えて行くはずもあり ません。検診をして病気が減るものなら検診を受ける意味もあります。しかし、検診をして 数値を知らせるだけが現在の検診です。検診をして数値を知らせることで体の悪い部分が治る のなら検診の効果があると思いますが、数値を知らせるだけなら検診をしないのと同じです。 検診により病気が減るどころかむしろ、医療費が年々増加し、病人が増えているともいえます。
実際に、皆さんが検診を受けて後日、検診の数値が届いた時に皆さんはどうしていますか? ただ自分の数値が平均値内にはいっているかどうかを見て一喜一憂するだけで、ほとんどの 方はそれだけで終わってしまいます。



届いた数値を見るだけで終わってしまって、次の瞬間から今まで通りの生活を始めます。 何人かは「摂取カロリーを減らさないと」とか「塩分を控えないと」と思い、食事を変えた り運動を始めたりするでしょう。しかし、大半の人はまったく何もしないと思います。定期 検診の通知書に「このままの状態が続けば○○の病気になります」と書いてあり、「あなた は○○と○○をして○○の病気を回避しましょう」などの忠告と改善方法が書いてあれば生 活を改善しようと思いますが、数値以外は何も書いてないのですから、だだ数値を見て、まだ 大丈夫だなと安心してしまうだけです。毎月の電気代を算出するのに電力計を見にこられま す。そして何キロワット使用しているという数値が書かれた紙を置いて行かれます。その数 値を見て「今月は電気を使い過ぎたな」と思うだけでほとんどの方は別に改善はせず、今ま で通りの生活を続けます。これと定期検診がまったく同じです。定期検診を受けても何もし ていないのでは検診をしている意味がありません。
「職場検診は、過去何十年にわたって毎年数千万人が受けていても、それで健康になったり 寿命がのびるというデーター的根拠はありません。確実なことは、病気や異常があると告げ られて不調になる人が激増するという一点だけですから、廃止するのが当然です。」 (『成人病の真実』近藤 誠著・文藝春秋・P.248)



毎年、受けている健康診断で国民が健康になったかどうかを日本では検証をしないまま行わ れているそうです。検証をしていないのですから健康診断が国民の健康にどれほど貢献して いるかどうかはまったく分かっていません。
最近、日本で大きな地震が各地で起きています。そこで、家がどのくらいの地震に耐えるの かを検査してもらう方も多いと思います。専門家に家の耐震性を調べてもらっても検査結果 をもらうだけで、家の補強工事などをせずにそのままにしておけば強い地震が起きた場合、 家は崩壊する恐れがあります。
車の車検を受けるため整備工場へ車を持って行き、検査を受けて検査結果が書かれた紙を渡 されるだけで、悪い箇所をどのようにすれば良くなるなどの説明もなければ悪いところの修 理もされていないようでしたら、何のために検査を受けたのか分からないと思います。耐震 性を調べて何もせずにそのまま放置しておくことや、車の検査を受けても何もしないという ことと現在の定期検診は同じで、映画のチケットを買うが映画は見ないようなものです。



市町村が住民などに呼びかけて健康診断を受けさせていますが、これには税金がかなり使わ れています。健康診断が国民の健康に貢献しているのかわからないまま税金を使って現在 は検診がおこなわれています。「検診の実地状況自体が民間、公的 なものを含めて実態がまったくつかめていない」 (「『健康』という病」米山公啓著・集英社・P.141)日本は税収が少なく、毎年赤 字国債を発行して国が成り立っています。そのような時に、成果が上がっているか、いない かわからないようなものに税金を使うべきではないと思います。



「検診は健康管理のスタートライン」(広報やない・2005.4.14) と市の広報に書いてありましたが、検診の実態をつかんでもいないのにがん検診の有効性が 謳われています。検診の実態もわかっていなのに、どうして検診が健康管理に有効だとわか ったのでしょうか。
その上、がん検診の無効性がハッキリしているものがあるにもかかわらず未だに検診がおこ なわれているものもあります。「集団検診が有効であるという思い こみのまま、現代の健康診断の有効性を確かめられることなくきてしまった。それでも最近 見直しの機運があり、一九九八年、公衆衛生審議会が指摘したように子宮体がん、肺がん、 乳がんは、現在の検診では実施してもしなくても、がんの発見率は変わらないとしている。」 (「『健康』という病」米山公啓著・集英社・P.130)と、公衆衛生審議会が上記の がん検診は無効と指摘しても広報などでは有効性が謳われています。受診者は無駄な放射線を 浴びたり、時間を無駄にする上に、受診料までも無駄にして不利益ばかり被ります。利益を 享受するのは医療機関ばかりです。科学的根拠を謳う現代医療が、どうして無効な検診をお こなうのか私にはわかりません。



つい最近(2005年4月)「アガリスクでがん細胞が消えた」など効能をうたったとして関係者 が薬事法違反で家宅捜査を受けたことが新聞などで報道されました。その他にも医薬品のよ うな効能・効果をうたって健康食品などを販売したとして逮捕された人も沢山います。私の 住んでいる柳井市の広報誌には「検診は健康管理のスタートライン」 (広報やない・2005.4.14)などといかにも検診を受けると健康になれるかのような 効能・効果を謳っています。検証もしていないもので効果などはわからないはずです。そし て、2005年3月23日の朝日新聞によると「大腸がんの検診の有効性の 評価を行う厚生労働省の研究班(主任研究者=祖父江友孝研究部長)は22日、集団検診での 内視鏡・エックス線検査や直腸指診に否定的な見解をしめす」とあり、 「自治体が実施する集団検診や職場検診など集団対象には勧められない」 としていますが、自治体や職場での集団検診には必ずといってエックス線での検査がありま す。現に私が働いている企業団地で今年も検診がありますが、腹部エックス線検査があるよう になっています。厚労省が否定的な見解を示したものを職場や市の広報で募集を堂々と行っ ています。このように国が推奨しないことを市民などに勧めること自体おかしなことです。 例えば、国が「このような運転をしてはいけませんよ」と法律で決めていることを、市が市 民に勧めているのと同じ事です。



「人間ドックなど個人対象では、安全性の確保と事前の十分な説明 があれば可能とした。」(2005年3月23日朝日新聞 朝刊)などと訳のわからないこと が新聞の記事になっています。集団検診では安全の確保と説明が十分にできないため危険だ が、人間ドックでは安全の確保ができ、十分な説明をするので安全というようなことがあるの でしょうか。タクシーの運転手がお客さんを乗せて出発前に自分の運転について十分な説明を すれば交通事故に遭う確率が少なくなり、バスなど多くの乗客を乗せて走る公共交通機関では たくさんの乗客がいるので十分な説明ができず、交通事故などに遭う確率が高くなると言って いるようなものです。しかも、集団検診ではできない安全確保が人間ドックではできるとはど ういうことでしょうか。
「事前の十分な説明があれば可能とした」 (2005年3月23日朝日新聞 朝刊)事前の十分な説明とはどのような説明なのでしょう か。いくら説明を受けても専門的なことへの判断は、よほど医学に通じている人以外にはつけ られません。内視鏡やエックス線での大腸がん検診は事故が多いために推奨しないとしてい ます。検診を受ける方には内視鏡の腕前など医師の技量はわかりません。特に内視鏡の扱い に不慣れな医師ほど内視鏡の腕前は言いたがりません。それなのに「十分な説明があれば安 全」とはおかしいのではないでしょうか。
この広報誌には基本検診やがん検診などができる指定医療機関が書いてあります。無効なが ん検診をおこなう理由は検診によって検診にかかわる人たちの職場の確保と病院などの収入 を確保するためではないでしょうか。
「一般的にいって、いまや人間ドックをふくめ検診業務は病院にと って、重要な収入源です。検診をすることによる収入があるばかりでなく、検診で発見した 病気を治す過程でまたもうかるという、一石二鳥の構造があります。それがゆきすぎると、 ささいな異常所見を強調して、病気や病人をつくりだすことにもなってしまいます。」 (『成人病の真実』近藤 誠著・文藝春秋・P.224)



日本のがん診断や治療は医師や病院で格差がかなりあります。調査によれば日本乳癌学会の 「乳癌診療ガイドライン」を基準にしたところ乳がんの治療でほぼ基準通りの治療を受けた 人は49パーセントです。かなりはずれた治療は24%、病状を悪化させた治療は27%もありまし た。(NHKスペシャル『日本のがん医療を問う』第一夜・2005年4月30日)このようにがん治 療の治療方法は病院間での格差がかなりあり、欧米よりもかなり遅れているのに検診を受け るよう盛んに誘います。これでは運転がものすごく下手な運転手のタクシーに乗れ乗れと盛 んに客引きをしているのと同じ事です。治療は下手なのに検診で患者ばかり探しているのが 今の日本の定期検診の現状です。
「医療技術の進歩がより望ましい結果をもたらすと期待したはずで す。ところが、病気はいっこうに減りません。科学的診断法が発達するにつれ、その数は 増える一方です。」(『がんは誰が治すのか』松野哲也著・晶文社・P.86)



くじ引き割付試験で有効性が否定されたため、アメリカでは肺がん検診を約20年前に止めていま す。しかし、日本ではアメリカが肺がん検診を止めた翌年から肺がん検診を始めているとい われています。日本での肺がんの発見率は0.04%といわれています。このような発見率では肺 がん検診はしてもしなくても同じようなものです。このような発見率ですからアメリカやイ ギリスなどは肺がん検診を行っていないのです。
胃がん検診は年間450万人(92年度・『それでもがん検診をうけますか』 近藤 誠著・ネスコ/文藝春秋・P.216)です。定期検診では胃と肺のレントゲン撮影は必ず あります。そのため、肺のレントゲン撮影も胃とほぼ同じ人数が受けていると思います。450万 人というのは92年度の数字ですので、現在ではもっと多くなっていると思います。病院で肺のレ ントゲン撮影のみを受けると約600円です。レントゲンとタンの検査では約1100円です。仮に 500万人がレントゲン撮影のみを受けたとしますと年間30億円のお金が動きます。
イギリスでは検診を受けても、受けなくても死亡率に差がなかったため、行われていない定期検 診を日本ではしているのですから、この検診は国民の健康を維持するためのものではなく、国の 検診に関わる人たちの職場を確保するためと医療機関に患者をながして経営を健全化させるた めだけに行われているのではないでしょうか。だから、健康診断を受ければ健康を維持できる と国民に勝手に思い込ませるために検診を受けると健康になれるとか、がんは治る病気だとか を市町村の広報誌などで国民に刷り込みをおこなっているのだと思います。
「脳ドックのメリットは、それをおこなっている病院側の経営戦略だ けになっているのが現状である。」(「『健康』という病」米山公啓著・集英社・P.155)



『医者は自分の病気を治せるか』(成島香里著・ポプラ社・P.28) に国立がんセンターの渡辺教授を取材した時のことが書いてありました。渡辺教授は生活習慣 病を研究されていたのに、53歳の時、たまたま受けた職場検診で生活習慣病である糖尿病が見 つかったそうです。国立がんセンターの教授ならば検診を勧める側です。その教授が53歳にな るまでに血液検査は1回、胃と肺がん検診は2〜3回しか受けたことがないそうです。糖尿病が 見つかったのも、たまたま受けた職場検診でした。会社員は法律で毎年、健康診断を受けなけ ればいけません。しかし、国立がんセンターの教授はたまたまです。何かおかしいのではない でしょうか。それなのに、がんは早期発見・早期治療を良しとして国や医療関係者は検診を受 けるように勧めていますが、国立がんセンターに勤めている教授が定期検診を毎年受け ておらず、53歳で胃や肺がん検診を2〜3回しか受けていないとはどういうことでしょうか。他 の本にも、医師はがん検診の有効性を訴えて人に検診をすすめてますが、医師のほとんどが検 診を受けていないことが書いてありました。医師が検診を受けないということは、検診を受け ても効果がないことを医師自身がよくわかっているからだと思います。
定期検診を受けて通院をするほどではない異常が見つかった場合、医者はどうしたら健康にな れるかを指導していないし、出来もしません。何故なら、医師は医大で健康になる方法を教わ っていないからです。その証拠に医師の約65%が何らかの病気を持っているそうです。
「今、私の手許に『ヘルス・プロフェッショナル自身の健康づくり』 という、題だけは仰々しいが全部で十五ページというパンフレットがある。何かの雑誌から抜 粋したものらしいが、以前著者が指摘したことが、数字で表してある。医師、看護婦、健康運 動指導士などのグループ毎に、十数種類以上の項目(小項目を入れれば百以上)のアンケート が実施されている。それによれば医者の六四・五パーセントは高血圧症、高脂血症、糖尿病、 肥満、虚血性心疾患、肝障害、その他の何れか一つ又はそれ以上の既往症、現病歴を持ってい る。即ち医者のうちの三分の二は大体慢性疾患をわずらっている病人(或いはその候補者)で、 医者が病人を診ているというより病人が病人を診ているのが病医院の実態である。しかも検査 を受けていますかという問いに対しては、医者共は以前私が指摘したように受診率は極めて低 く、腹部X線では十四パーセント、内視鏡検査では四・五パーセントである。医者がよく患者 に言う『病人のくせに検査もうけないで…』などという言葉はそのまま医者に向かって投げ返 すべきものである。」(『患者に言えないホントの話』柴田二郎著・新潮社・P.58)



毎年、1兆円ずつ伸びる医療費をどう抑制するかで国は、国民健康保険を都道府県単位に再編 成するなどして抑制を目指すそうですが、そんな小手先の再編をしても結果は見えています。 今は、それよりも医療費が毎年、1兆円ずつ増えるのはどうしてなのかという根本原因を調べ て抜本的な改革をしないと駄目だと思います。定期検診など無駄なことは止めて、検診に使 っていた税金をもっと国民の健康に役立つよう活用してほしいと思います。例えば、現代人 が抱えているストレスや運動不足を解消する方法や、有害な化学物質を体内に取り込むと病 気になるなどの情報を収集し、市町村の広報誌やテレビなどの公共放送を利用して伝えたり、 食品添加物や合成洗剤等を使わない生活への改善を促す対策を立て、市町村で指導する方が 医療費抑制につながり、定期検診を受けるよりはるかに効果が上がるように思います。検診 や治療よりも病気にならないようにする予防が一番重要です。





エコロジカル・ヘルシーショップ三友 桧垣史郎
2005年4月
 
 
 
引用・参考文献
『成人病の真実』近藤 誠著・文藝春秋
『患者に言えないホントの話』柴田二郎著・新潮社
『医者は自分の病気を治せるか』(成島香里著・ポプラ社・P.28)
『健康』という病」米山公啓著・集英社
『それでもがん検診をうけますか』近藤 誠著・ネスコ/文藝春秋
2005年3月23日朝日新聞 朝刊
『がんは誰が治すのか』松野哲也著・晶文社
NHKスペシャル『日本のがん医療を問う』第一夜・2005年4月30日



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